作業ミスについて考えてみる

作業ミスについて考えてみる

ITの業界(他の業界でもそうだと思いますが)では設定作業や変更作業を(いわゆる本番作業)行う場合、作業手順書やチェックシートなどを使って、ミス(ヒューマンエラー)が起こらない様にしています。

しかしながら、実際にはミスは起こってしまいます。(悲)

つい最近も、マイナンバーカードを使ってコンビニで住民票を取得したところ、全く別人の亡くなられた方の住民票が出てきた、違う方の銀行口座が紐づけられてしまったなどの事案が連日報道されています。

今回報道されているマイナンバーカードの一連の問題の中には、作業によるミスもあるように聞いています。

最近、このミスの発生原因とは何か、どうすれば防げるのか、についてある組織に於いて関係者への聞き取り調査、作成された資料の確認、本番作業の立ち合いなどを行いましたので、見えてきたものを書きたいと思います。

目次

作業手順書があるのに何故ミスをするのか!?

作業を行うことが決まった段階で、実際の作業するまでに次内容について整理すると思います。

 1. どのような作業をするのか
 2. 設定する値、入力するデータは何か → その値は正しいか
 3. 設定をした際に、得られる正しい結果(想定された結果)は何か
 4. 本番作業のメンバーはだれか(役割分担はどうなっているか)
 5. 本番作業の時間はどの程度掛かるか → 工程に問題は無いか
 6. 想定と違った結果の場合、切り戻しをする判断はいつか

まだ確認・検討する内容はあるかもしれませんが、作業の大きさ・規模に関わらず、概ね上記を予め関係者で決めて、レビューして、「実施して良いよ」を責任者が決めて、本番作業をする、と言った流れだと思います。

そう考えると、作業ミスは発生しないように思えますが、実際には

a. 作業手順書が間違っていて、作業実施者の判断で変更した(想定した作業とは違う作業を行った)
b. 作業手順書の一部を飛ばしてしまった(やらない作業があった)
c. そもそもの手順に不足があった又は間違っていた

などからシステム障害が発生しています。

作業手順書に間違いがあることが分かったら作業の手を止めて、責任者に連絡をする、や、作業は作業実施者と確認者の2名体制で行っていれば、bの問題も無くなる、はずです。

c.についてもレビューをしっかりとすれば防げるはず。

ミスが入り込む余地はどこにある?

ミスが発生した状況、体制、やり方等々を聞くと、おぼろげながらにミスが入り込む余地が見えて来ました。

1. 時間が無い
いろいろなスケジュールが混んでいて、関係するメンバーに心のゆとりが感じられませんでした。
人は時間が無く焦ると誰もが正しい判断を下せなくなりますしチェックも甘くなります。

2. 作業手順書、作業やチェック自体の誤り
複数人でチェックしているものの、「作ったから確認して」とお願いをするパターンが多いことが分かりました。
先述の「時間が無い」ことから資料を作るときの考慮不足、チェックする方も細かく確認しない、状況見えました。

3. 本番作業時の複雑さ
作業手順を見ていくと、この作業ではこのファイルのこの部分の値を入力する。この作業ではこの資料を見て対応する、などと複雑な作業を行っていました。
→一種類の資料を見ながら作業をする、とシンプルになっていない作業手順書の作成の手間は減る可能性がありますが、本番作業時は負担が増える懸念がありました。

4. 作業者、確認者の2名での作業実施
いわゆるダブルチェックで本番作業を行っていたものの、作業の 進め方、入力値やコマンドの確認の仕方、使う作業手順書の扱いは担当に依ってまちまちであり、「こう言ったやり方で本番作業をすること」とマニュアルで定めても人の解釈によってやり方にばらつきがあることが分かりました。

どう改善するか

先述したそれぞれの問題に対する対策について考えてみました。

1. 時間が無い
作業をすることが分かってから本番作業までのスケジュールがあると思いますが、この部分をキッチリと管理し、関係するメンバーに焦りが極力無いような環境を作ることがまずは大事であると思います。
作業手順書やチェック項目などを洗い出す手間が掛かり、ちゃんとした確認ができなければ作業の実施自体を遅らせるなどの判断も必要だと思います。
→作業関係者の心の余裕を持たせる&必要なチェックは必ずさせる

2. 作業手順書、作業やチェック自体の誤り
作業手順書を作った人と別な人で同じ時間を共有して、一つ一つ見ていく事で間違いや漏れを防ぐ可能性が高まると考えています。
お互いが別々に作成、チェックすると、見られる範囲が限定されますが、二人が同時に見ることで「この値はどこから持ってきた?」「この確認は何のため必要?」などの質問が出て、お互いに気づきを期待できます。
→作業手順書の誤りを完全に無くす

3. 本番作業時の複雑さ
本番作業時にいろいろなファイルや資料を見ることをやめ、一種類の作業手順書に統一し、本番作業を極力シンプルにすることで、本番作業時のミスを排除する事が優先であると考えました。
その為には前項2の作業が重要であり、これをキッチリする事が大前提です。
しかしながら項2まで確実に実施できれば8割方終わったと言えます。
→やはり「段取り8割、本番2割」でしょうか

4. 作業者、確認者の2名での作業実施
人的な負担は掛かりますが、品質管理者→監督者を任命して、その監督者が全ての(極端ですが)本番作業の開始から終了まで立ち合います。
監督者からの指示で一つ一つの作業を行い、作業者が声に出して設定をし、確認者が声を出して確認する、そして一つの作業が終わったら監督者に報告する、これを繰り返すことで、確実な作業が実施できると考えています。
→想定外の事が発生しても冷静な判断ができるでしょうし、本番作業の「品質」の均一化が重要だと思います。


皆様の職場等では当てはまらないことがあるかもしませんが、参考にできる点はあると思います。

是非ご活用ください!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次