以前の記事でプライベートクラウドの考え方やメリット等についてご紹介しました。
今回はHCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)とその代表的なNutanix(ニュータニックス)社の製品をターゲットに話を進めたいと思います。
HCIの正体とは!?
従来の仮想化サーバを稼動させる基盤は、
- サーバ
- ストレージネットワーク(SAN)
- ストレージ
の3層に分かれた機器を調達、購入するのが一般的で、まだ多くの現場で稼動し、新しく導入もされています。
一方、HCIはこの3層に分かれた機器や機能が一つの筐体に統合された、いわゆる総合基盤(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)です。
一昔前に「ブレードサーバ」が流行りましたが、ブレードサーバはサーバとスイッチなどを統合した1つの筐体となっており、当社も導入していました。
ブレードサーバが何枚か搭載される筐体の中には、ブレードサーバが接続される背面のボード(バックプレーン)が故障すると全てのサーバが停止することになり、筐体の交換が必要になります。
全ての製品には当てはまらないかもしれませんが、HCIは電源とファン以外の共有ポイントは存在しない単純な構造であり、シングルポイントを排除した構成となっています。
つまりは物理的なパーツの故障に強い設計になっています。
3層構造基盤の問題・課題(何が悪い!?)
Nutanix社の製品を紹介する前に、3層に分かれた従来の基盤に関する問題・課題を見てみます。
1.サーバ、SAN、ストレージの構成や組合せが複雑
機種選定や構成について特別な知識が必要になるサーバ、ネットワーク、ストレージのエンジニアも必要となり設計、運用などに人的なコストも大きく掛かる
2.機器ごとに拡張上限が異なる
稼動後の拡張時、効率的な拡張が難しい場合がある
3.機器の追加などの構成変更やバージョンアップ作業は一大作業
ハードウェアが複数になるため、それぞれの機器でのバージョンアップ作業が必要となり、サービスを停止させない様に作業の実施方法や手順を検討する手間が掛かることと、バージョンアップ作業自体も手間が掛かる
4.トラブル発生時の切り分けが大変
複数の機器が存在するため、HCIと比較しハードウェアに関する障害が多く、障害発生時にはサーバ、ネットワーク、ストレージのそれぞれのエンジニアによる切り分け作業が必要になる
これらは、以前3層構造の基盤を導入、運用していた我々が実際に直面していた問題であり、メルマガを読んでおられる方にも、これらを実感されている方もおられるのではないでしょうか。
HCI(代表選手のNutanix)でできること
弊社ではあるサーバ仮想化基盤のリプレースに辺り、HCIをメインに複数社で検討し、結果Nutanix社の製品を導入しました。
運用した結果も含めてNutanix社の製品でできることを中心にその特徴をご紹介します。
1.省スペース・コンパクト
スペックが違うため単純比較はできませんが、リプレース前の機材は概ね2ラック使用していましたが、リプレース後では1/2ラック程度に収まっています。
しかしその能力(仮想サーバの数)は大きくなっており、スペース辺りのパフォーマンスは格段に高くなっています。
2.スケールアウトが簡単
以前の構成ではストレージを追加する場合、ネットワークの配線やストレージの追加作業など様々な作業が必要でしたが、Nutanixの場合、追加の機器をネットワークに接続し、管理画面で追加の設定を行うだけで追加作業は終わり、リソースの増設ができます。
3.シンプルかつ必要なことが全てわかる管理画面
以前の構成では、サーバ、SAN、ストレージと管理画面が分かれており、サーバの追加や稼動状況のチェックはそれぞれの管理画面から行う必要があり、それぞれの知識も必要になっていました。
しかし、Nutanixの場合、プリズムと言われる一つの画面で一通りのオペレーションを行うことができますので、新たに仮想サーバを構築する作業も以前と比較し手間は大幅に減りました。
4.無停止メンテナンス
サーバやストレージのファームウェアのバージョンアップは、カタログでは「無停止」とうたっているものが多いのですが、実際の作業の時にはメーカーに確認すると「再起動が必要です」と言うことになり、その物理サーバ上で稼動する仮想サーバを別な物理サーバ上に移設させたりと大変でした。
しかし、Nutanixの場合は停止させる必要がないため、ファームウェアのバージョンアップもサービスを停止することなく作業が可能となりました。
5.障害が大幅削減
物理的な機器が多ければ障害が多くなる⇒これはやはり本当でした。
以前の構成だと、ハードディスクが壊れた、サーバのファンが壊れたと何かしらの障害が度々発生していましたが、Nutanixを導入したことにより、障害発生が大幅に減りました。
具体的な数値は見えていませんが、物理的に壊れる回数も大幅に減り技術者の負担も大きく軽減されていることも事実です。
前回のメルマガでも書きましたが、HCIを導入する場合にはある程度の規模のサーバ台数が無いとコストに見合いません。
しかし、概ね2ラック以上の規模で物理サーバが稼動している環境であれば、十分にNutanixの性能や運用に関わるコストの恩恵を受けることができるでしょう。
まだまだNutanixの特徴は書ききれていませんが、仮想化基盤の更新を考えておられる場合には、是非とも検討の一つに加えてみてはいかがでしょうか!