今年8月に鳥取東部では台風による大きな被害がありました。
土砂崩れや橋の崩落などによる通行止めが相次ぎ、一時最大857世帯、2000人近くが孤立する被害が発生しました。
さらに断水や停電も長引き、特に被害の大きかった佐治町の一部地域では、1週間程度断水が続いたと報じられています。
台風だけでなく、近年では特に6月下旬から7月上旬にかけて線状降水帯発生による大雨被害も全国で相次いでいます。
加えて、冬季は特に日本海側地域で大雪による被害も想定されます。
過去にも記事としたことがありましたが、今回は改めて風水害や雪害に備えるBCPについて、どのような考え方で何を整備したら良いか記事にしてみます。
対応を時系列で整理するタイムラインが鍵!!
地震などのように突発的に発生する災害と異なり、台風や大雨、大雪はニュースによる報道および気象庁の会見などによって、事前にある程度情報がわかる形で迫りくる災害です。
勿論、線状降水帯の発生など予測が難しいケースもありますが、その場合でも自治体が発表する避難命令や、気象庁の発表する各種警報は状況に応じて順次発表されていきます。
ある瞬間に突然、河川が氾濫したり、事業所が浸水するわけではないのです。
そのため、災害に備える事業継続計画は、その対応を時系列で整理しておくことが大事です。
「いつの段階でどのような意思決定をする」
「いつの段階で誰がどのような行動を取るか」
これをまとめたものを「タイムライン」と呼びます。
「いつの段階で」を考える際の時間の判断基準となるものは、台風に対しては直撃の「3日前」「2日前」「前日」「当日」など、日数を基準にして考えることができますし、大雨による洪水に対しては、自治体からの各種避難命令の発令など何かしらの情報発表を基準にしてもらうこともできます。
具体的にどのような対応が必要なのか
タイムラインで取るべき細かい対応は当然会社や事業ごとに変わってきますが、一般的には概ねどのような対応が必要なのか、河川氾濫による洪水に備えたタイムラインの一例を見ていきましょう。
<大雨の予報が発表されたとき>
・大雨とその危険度に関する情報確認(気象庁サイトと洪水キキクルにて)
<自治体から高齢者等避難が発令されたとき>
・災害対策本部設置と社会への周知、招集
・重要な物品の保護(書類、機器、記憶媒体、商品、備蓄品等)
・浸水対策実施(土嚢、止水板を利用)
・臨時休業の指示(従業員への伝達、会社ホームページへの掲載等)
・従業員の帰宅もしくは避難
<自治体から避難指示が発令されたとき>
・代替本部の開設
・代替本部への移動・避難
・業務車両の移動
<近隣河川が氾濫が発表されたとき>
・従業員の安否確認
<水が引いて被害状況の確認が出来るようになったとき>
・顧客仕入れ先への連絡
・社外への情報発信
・自社被害の状況確認
<本社の復旧作業が可能と判断したとき>
・復旧要員の招集
・復旧作業
・業務再開の判断
いかがでしょう。これはあくまで一例で具体的にどのような方法で実施するか詳細までは記載していませんが、このように時系列順で対応内容を整理しておけば大雨の危険が迫っているときでも、やるべきことの優先順位を間違えずに対応できそうですね。
大雪に対しても、積雪状況や交通状況、周囲の被害状況を判断基準として、「どのタイミングで何をするか、何を判断・決定するか」をタイムラインとして整理しておくことが同様に有効になります。
タイムラインに則った大雨対応は適切な情報確認が肝要
せっかくタイムラインで行動計画を整理しておいても、適切かつ迅速に情報収集が出来ていなければ、対応が遅れてしまいます。
計画の中では、誰がどのような方法で情報収集を行うのか、しっかり決めておかなければなりません。
上記のタイムライン例でも、最初の大雨予報が発表されたタイミングで大雨と危険度に関する情報確認を行う、としていますが、その確認を行うには、気象庁から提供されている「キキクル」がおすすめです。
「キキクル」は土砂災害、浸水、河川氾濫による洪水といった危険度の高まりを地図上で確認できる危険度分布情報サービスです。
パソコンのブラウザからも確認できますし、スマートフォン用アプリも提供されています。
「キキクル」ではその危険レベルを5段階で色分けして表示してくれますが、その危険レベルをタイムラインの判断基準としていただくのも良いでしょう。
勿論、現地で既に起こっていること(目視できることや体感できること)も「キキクル」や報道などから得られる情報以上に大事です。
事業所周辺で洪水が既に発生していることが確認出来ている場合や、責任者が必要と判断した場合には、情報発表を待たずに臨機応変に動けるようなルール作りをしておきましょう。