福島県沖地震による企業への影響

地震

東日本大震災から11年という時期であり、それに関連する記事をまとめていたのですが、昨晩、福島県沖を震源とする震度6強の地震が発生したことから急遽内容を変更して、この内容をお届けすることにいたしました。

今回の地震による被害については、いろいろと目を通していらっしゃるとは思いますが、特に企業への影響面について3月17日に報じられた各種情報をもとに整理してみました。

目次

福島県沖地震による製造業への影響

製造業全般

〇IHI
・航空エンジン部品などをつくる相馬事業所(福島県相馬市)で停電が続き、操業を停止 
・17日は従業員の出勤を取りやめ
・生産設備に被害があるかどうかは確認中で、操業再開の時期未定

〇ルネサスエレクトロニクス
・那珂工場(茨城県ひたちなか市)、高崎工場(群馬県高崎市)の操業を地震発生直後から停止
・一時は停電したが、その後復旧
・クリーンルーム内が安全かどうかや、製造装置や製品に被害が出ていないか、17日朝から確認
・米沢工場(山形県米沢市):従業員1人が打撲の軽傷
 地震直後に操業を停止し、17日朝から一部の工程でテスト生産を再開

〇ソニー
・ストレージメディア工場、同県白石市の半導体レーザー工場、山形県鶴岡市のイメージセンサー工場の稼働を一時停止
・安全確認のためで、設備の状況を確認
・人的被害無し

〇キオクシアホールディングス
・フラッシュメモリーの工場(岩手県北上市)で一部の製造装置が地震の影響で停止
・詳細点検中。作業員や建屋の被害な無い。
・メモリーの生産自体は継続。
 
〇村田製作所
・宮城県登米市にある電子部品のチップインダクターを製造する工場が地震後に出火
・17日午前2時ごろ鎮火
・東北に4工場あり、いずれも人的被害はなく、被害状況を確認

〇SUMCO
・シリコンウエハーを製造する米沢工場(山形県米沢市)で、現時点で公表すべき被害は確認されておらず、工場は稼働。

〇デンソー
・福島県内の工場の設備の一部で被害を確認
・今後の生産に対する影響を精査

〇住友ゴム工業
・タイヤ工場(福島県白河市、国内最大のタイヤ生産拠点)で稼働を停止
・建物などに大きな被害は出ておらず、それほど時間がかからず稼働を再開できる見通し

〇ヤクルト
・福島工場で製造機器にずれが発生
・安全を確認のため製造を停止
・17日の同工場での製造予定分は他工場で生産

〇アサヒグループ
・福島県のビール工場が製造を停止
・現在、影響を確認中

〇三菱ケミカル
・城県鹿島地区と千葉県にあるコンビナート内の一部の化学品製造プラントが停止
・緊急停止後の点検を実施、復旧時期は判明していない。

自動車各社

〇トヨタ
・トヨタ自動車東日本岩手工場(岩手県金ヶ崎町)、宮城大衡工場(宮城県大衡村)、宮城大和工場(同県大和町)の3工場の操業を停止
・宮城大和工場は17日に稼働再開予定
・岩手工場、宮城大衡工場は17日昼の稼働を停止、夜の稼働は状況確認後に判断
・人的被害は無かった
・今回の稼働停止による減産影響は精査中
・仕入先や販売店の被害状況も現在確認中

〇日産自動車
・いわき工場(福島県いわき市)は16日の夜間の稼働を停止
・17-18日はもともと非稼働の予定
・いわき工場は地震発生後に夜勤を停止し、従業員が避難

福島県沖地震による通信・インフラ・物流企業への影響

携帯各社

福島県等の一部地域で利用できなかったり、つながりにくくなったりしている

〇ドコモ
・福島県福島市、伊達市、二本松市、南相馬市の一部地域で携帯電話サービスが利用できない

〇KDDI
・福島県相馬市と南相馬市の一部エリアで通信がしづらい

〇ソフトバンク
・宮城県白石市、村田町、川崎町と福島県相馬市、南相馬市でサービスが利用しづらい状況

〇楽天モバイル
・福島県相馬市や南相馬市、宮城県石巻市など一部地域で通話やデータ通信の利用がしづらい

電気

〇東北電力
・火力、水力発電所が停止
・電力需給が逼迫する恐れあり、東京電力ホールディングスなどから電力融通を受けた


石油関連

〇エネオスホールディング
・仙台製油所(宮城県仙台市)で地震の影響で安全停止装置が作動し全装置が停止
・川崎製油所(神奈川県川崎市)で石油精製過程の入り口にある常圧蒸留装置2基のうち1つが停止→いずれも再開時期未定
・根岸製油所(横浜市)で一部装置が停止したが、稼働再開した。

〇出光興産
・参加の東亜石油京浜製油所(神奈川県川崎市)が地震の影響で一部装置が停止
・常圧蒸留装置の稼働は継続している

コンビニエンスストア

〇セブンイレブン
・商品が落下したこと等で、一時は福島、宮城両県などの約80店舗が休業

〇ファミリーマート
・約60店(午前11時現在)で休業

〇ローソン
・約40店舗(午前9時現在)で休業


流通

〇ヤマト運輸、佐川急便
・交通規制の影響で荷物の集配に遅れが生じる可能性あり

福島県沖地震によるその他業種への影響

宿泊施設

〇東急イン新白川駅前店
・停電は起きていないが、ホテルのエレベーターが止まっている。
・立体駐車場も停止
・宿泊客の数人が、階段でロビーに下りている

百貨店

〇仙台三越
・仙台三越(仙台市)は商品が散乱するなどの被害があり、17日を休業

金融

〇みずほ銀行
・6日深夜から17日未明にかけて一部のATMが一時的に停止

医療機関

〇公立藤田総合病院(福島県国見町)
・地震の影響で220トンをためる貯水タンクが壊れ、17日午前も漏水継続
・県外の業者が修繕のために向かっているが高速道路通行止めで移動に時間がかかっている。
・入院病棟は免振構造のため大きな被害無し

今後、事業継続に関連する情報が報じられるようになれば、改めて内容を取りまとめ、お知らせしたいと思います。

補足

「今後、BCPで対象となる重要な脅威は何だろうか」という話をある打合せの中でしていた際、重要な脅威の一つとして「サイバー攻撃」がある、いう話になりました。

国内大手企業がサイバー攻撃で事業中断する例等も発生していますし、以前のメールでも取り上げたランサムウェアにより病院業務が中断するという例も多く目にするようになってきています。


通常のBCPでは、時間の面で「最大許容停止時間」を考えますが、例えば仕入れ商品や使用するガソリン価格がこれ以上の値段になると事業に致命的な影響が発生するというような面も考えていく必要があるのではという議論になりました。

BCPでは「時間」と「操業度」の2軸が重要になりますが、じわじわ変化していく様々な環境変化もリスク管理の中で考慮していく必要があります。

じわじわ型のリスクとして新型感染症がありますが、もう少しタイプの違うリスクとして、既に始まっている気候変動があります。

台風の大型化や気温の上昇等が私たちの会社の業務に与える影響も今後はしっかり考慮していく必要があります。


気候変動に対する動きとしては、「TCFDコンソーシアム」なども設立されており、対応する計画を作る際には、気候変動の影響が自社の事業に与える影響を考慮し(事業影響度分析)を実施し、必要な対応策を検討するというプロセスが提示されており、このプロセスはBCP策定と同じです。

気候変動への対応については、カーボンニュートラルやSDGs等の動きとあわせて、今後取り組みが加速していく部分と感じているため、これらの動きについては感度を高くしておきたいと思っています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次