リスクコミュニケーションで企業のBCPを進めるヒント

コミュニケーション

新型コロナウィルス感染症の新規感染者数や重症者が劇的に減少しています。ここまで減少することは誰にも想像できなかったようで、専門家もその要因について明確に説明できないようです。
ワクチン接種率が7割に達したことが大きな要因であることは間違いなさそうですが、海外の感染者数の増減情報と全く異なるカーブを描いており、少し不気味なイメージも持ってしまいます。

緊急事態宣言が解除されても、ほぼ全ての日本人がマスク着用を心がけており、この調子で新型コロナウイルスが消え失せ、インフルエンザ感染にも対抗できることを期待しています。

今号では、コロナ禍での対応で称賛された 島根県:丸山知事のインタビュー記事(リスク対策.comで掲載)

「批判を怖がらない、自治体のための組織で取り組むリスクコミュニケーション(ボトムアップとトップダウンの両面から意思決定を)」
の記事を参考に、「リスクコミュニケーション」について考えてみます。

目次

『リスクコミュニケーション』とは?

この『リスクコミュニケーション』は近年耳にするようになりましたが、その意味はウィキペディアよると次のようになります。

「社会を取り巻くリスクに関する正確な情報を、行政、専門家、企業、市民などのステークホルダーである関係主体間で共有し、相互に意思疎通を図ることをいう。合意形成のひとつ。」

リスクコミュニケーションを成功させる方法その1

これまでの新型コロナウイルス感染対策は、リスクコミュニケーションにおける「合意形成」がしっかり行われていたと感じています。

コロナ対策を進めるにあたっては、専門家委員会で検討が行われ、本会議での採択を経て、総理が記者会見を通じて国民に直接お願いするという方法が取られ、国民にもリスク情報と必要となる対策に関する情報が共有されました。

このようなプロセスを見ると、コロナ対策の進め方はリスクコミュニケーションそのものだったと言えます。

あわせてSNSでの情報の共有も効果を発揮したのではないかと感じています。当初はSNSによって「コロナウイルスは熱に弱い」とか「ビタミンDが効く」というような誤情報やフェイクニュースが広まってしまったこともありました。

しかし、行政と民間が連携して正確な情報発信に努めたことや私たち自身も誤った情報に気を付けるようになったことに加えて、国の取り組みに対するSNSでの積極的なシェア等も進められ、感染予防の取り組みについて社会的になんらかの合意が進んだ部分があるのではと感じています。

企業内で物事の方向性を決定するにも、以前はトップダウンが主流でしたが、現在では社員の合意が欠かせなくなってきています。

島根県の対応を見ると、できるだけ沢山の情報を共有し、ボトムアップの検討を重視するとともに、意思決定は責任者(丸山知事)で行うというリスクコミュニケーションが実践されていました。

リスクコミュニケーションを成功させる方法その2

上記のように「リスクコミュニケーション」について紹介してきましたが、リスクコミュニケーションを進める際に『リスクを許容する場合』には、それなりの見返りが必要になるという条件が必要となるようです。

これを『リスクと利益のトレードオフ』と言います。今回のコロナ対策については、感染者が減り、経済が回復するという見返りがあるため、多くの方が不便を感じながらもマスク・手洗い・3密回避を行い、飲食店等の経営者は営業時間短縮などのリスクを取ってきたと言い換えることができます。

BCPを考え、実行するときもこれに通じるところがあります。

災害の影響を最小化するための事前対策には「耐震化」「発電機」「クラウド利用」等が挙げられます。しかし、即実施というわけにはなかなか行きません。それは、事前対策を進めるための費用負担というリスクに対して、その見返りがはっきりしないためです。

しかし、BCPで準備するものが災害時にどれだけ活躍し、災害時に発生する損失をどれだけ減らせるのか、という情報を正確に示すことができるなら、社内の合意は得やすくなるでしょう。

国や自治体では、BCPに基づく対策を支援するための補助金等を準備しています。この補助金を使うことでコスト負担を減らすことができますし、新たな設備導入により、効率化や省力化、省エネ化も可能となれば、経営的なメリットも出てきます。さらに取り組み内容を公表することで信頼できる企業としてのPRにもつながります。

このような利益を認識できると、事前対策の実施というコスト負担(リスク)を許容することが可能になるというわけですね。

事業継続に必要となる対策も、「リスクコミュニケーション」という視点で考えてみると、社内に対してどのような情報共有が必要なのかというヒントがもっと見えてきそうです。

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