全国的に新型コロナウイルスの感染者が増加していますが、山陰両県でも急に感染者数が増えています。
その影響で自分が公私で関わっていたいろいろなイベントが中止や延期になっており、当地でもいろいろな影響が出ています。
そのような中、いよいよ東京オリンピックが開催されます。
期間中における第5波の急激な拡大が懸念されるところですが、多数の関係者の取り組みで感染拡大が最小限に抑えられ、菅総理が言っているように「やってよかった」と言われるようなイベントになればと願っています。
今回は先日ある組織に向けて行ったBCP研修会の内容を踏まえて、BCPを維持改善するためのヒントについてお伝えします。
社内で実際にやってみた要素も含んでいますので、きっとお役に立つと思います
作ったBCPを維持改善するための3つのヒント
帝国データバンクが企業のBCPの策定状況等を調査した最新の結果が6月14日に公開されています。
BCPを策定しない理由は、「策定に必要なスキル・ノウハウが無い」が最も多く、次いで「人材・時間が確保できない」が多くなっていました。
これは、BCPの維持改善が進まないことにも通じる要素だと思います。
この結果を踏まえて、せっかく作ったBCPをどうしたら維持改善できるのか、そのヒントをお伝えしたいと思います。
先に結論からお伝えしますが、
そのヒントとは、
1)(できれば若手の)担当者を決める
2)「次にやること」と「いつやるのか」を決める
3)防災目的でBCPに取り組まない
の3つとなります。続けて、それぞれの内容について解説します。
作ったBCPを維持改善するための3つのヒント1<担当者を決める>
BCPの維持改善が完全に止まっている組織にいろいろ伺ってみて、ほぼ共通していると気が付いたことは、「担当者を決めていない」ということでした。
担当者がいない場合、社長自身が担当しているということもよく聞きます。
しかし、社長自身が頭の片隅にBCPを気にしていたとしても、自分で手を動かすことは相当の努力が必要でしょう。
逆にBCPの維持改善活動ができている多くの組織では、BCPを動かすための担当者が決められています。
BCPが止まってしまっているなら、担当者をまず最初に決めましょう。
その時の注意点が1つあります。
担当者には、BCPの維持改善は「できればやる」「時間が空いていればやる」というレベルではなく、どんなに忙しくてもやるという「正式な業務」として割り当てることです。
ある企業では、BCPの推進担当者を若手社員に割当てていました。
会社の仕組みを理解してもらえますし、教育的な役割も狙ったようです。
BCPは経営層の関与が必要とよく言われるので、担当者を決めてしまったら、経営者の関与が無くなるんじゃないかと思われる方もいらっしゃるでしょう。
担当者を決めることは、担当者に全部を丸投げする、ということではありません。
事務的な文書の更新や教育・訓練実施の段取りなどを担当者に任せますが、訓練や教育等を実施する上ではそれらの承認や指示をしていくことは不可欠です。
担当者が決まっていなければ、まず最初に決めてみましょう。
作ったBCPを維持改善するための3つのヒント2 <「次にやること」と「いつやるのか」を決める>
次のポイントは「次にやること」と「いつやるのか」を決めるということです。
これは、例えばBCPの中でいろいろ計画したけど、例えば
9月に安否確認訓練だけは行い、その時に出た課題は整理し、改善する
ということだけでも決めておければ、大きな前進になると考えています。
私たちがBCP策定をご支援する場合、ご提供するひな形には
〇月に社内でBCPの教育を行う
〇月に文書内容の点検を行う
〇月に××訓練を実施する
〇月に・・・
〇月に・・・
と言った例示を記載しています。
しかし、多くの組織はBCPを策定する時に、ほぼその例示どおりに維持改善計画としてまとめてしまうのですが、 実際はできない(しない)ままでスルーしているようです。
そして、そのままスルーが続いてしまい、結果としてBCPが無かったかのようになってしまいます。
このような状況を見ていると、BCPを策定した後、本当に「次に何をするのか」、それを「いつするのか」が明確に なっていません。
初めて取り組むBCPであるなら、計画に書いたあれもこれもやっていくというのは正直難しいでしょう。
例えば、ある企業のように、
「社長の誕生日の時に演習をし、今後改善しなければならないことを決める」
「社長の奥さんの誕生日の時に決めたことの進捗を確認する」
と言った決め方は非常にわかりやすいです。
このように「次にこれだけはやる!」が決まっていれば、少しでも前進するでしょう
作ったBCPを維持改善するための3つのヒント3 <防災目的でBCPに取り組まない>
これは過去の記事で何回かお伝えしたことです。
防災目的だけでとりまとめた計画は、災害が起きた時にやることは一杯あるものの、日常業務とはどうしても関わりが少なくなります。
そこで、日常業務をやっていると、BCPと関わりを持つことはほぼ無いというのが一般的です。
一方、BCPを続けている中小企業の多くが、BCPを日頃の業務に活かそうとしていたり、営業に役立てよう、と防災目的以外の効果に目を向けています。
実例を紹介すると、鳥取県のBCPセミナーでも以前ご講演いただいた賀陽技研様は、BCPをなんとか会社の発展や売上増に活かしたいと考え、BCPに取り組み始められたそうです。
BCPを策定した後は、これまでなら自社で対応できず、断っていた案件を、代替製造のお願いをしている会社に相談して、見積を出すなど、BCPで作った仕組みを日常の営業活動にも役立てていることです。
他社と連携することで、BCPが成長を続けるための戦略であるとも認識されています。
このように、防災目的以外の効果を目指してBCPに取り組まれると、BCPが違ったものに見えてくるでしょう。
この3つができない場合、最後の手段として、「認証を取得し、外圧を活かしてBCPの維持改善を図る」というもの
もあります。
BCMS認証、レジリエンス認証、事業継続力強化計画と言った制度がありますので、認証維持にかけられる手間や費用に応じて、これらの取得・維持を行うのも手です。
まとめ
今回はBCPの維持改善のための3つのヒントについてお伝えしました。
そのヒントとは、
1)(できれば若手の)担当者を決める
2)「次にやること」と「いつやるのか」を決める
3)防災目的でBCPに取り組まない
の3つであることを紹介しました。
まずは担当者を決めることからスタートしていただけると幸いです