災害時における代替戦略の有効性

代替

東日本大震災から10年が経過し、各新聞がその後の状況やBCPへの取り組みなど取り上げて紙面を賑わせています。

弊社は山陰両県でBCP策定支援を行っていることから、東日本大震災以降の山陰両県におけるBCPの取り組み状況について、地元紙から取材を受けました。

取材の際に記者の方にいろいろ話をする中で、様々な組織にとって、BCPは今後も更に取り組んでいく必要性を改めて感じることとなりました。

今回は鳥取県・岡山県・徳島県の3県のある組合間の連携協定に触れながら、組織が検討しておくべき代替戦略についてお伝えしていきます。

目次

組合間の代替戦略:連携協定

鳥取県・岡山県・徳島県のとある組合における災害時における相互支援の取り決めは「連携協定」という形で平成25年から実行されています。

この協定をまとめるために、各県の中小企業団体中央会様が尽力され、

  • 災害時中央会間連携協定書
  • 災害時組合間連携協定書
  • 災害時企業間連携協定書

が出来上がっています。

 

その概要はおおよそ以下の通りです。

  • 被災組合、企業に対する応急支援物資、資材の供給
  • 被災組合、企業に対する応援対策および復旧作業に従事する人員の派遣
  • 被災組合、企業の求める業務に対する対応可能組合、企業の紹介
  • その他支援業務

それらの3県が同時被災することがなければ、この協定により非常に力強い連携のルールが定められたことになり、定期的に訓練等を行うことで、災害時の動きを確立し、強い企業群ができあがることが期待できます。

ただ、被災時だけを考えていては、なかなか動けません。

折角構成された企業群ですし、平常時においても協力関係が構築できればと、専門家として招かれた会議の席で意見を述べさせていただきました。

それは、下記の代替え復旧を実現するためのステップとして考えて貰えないか、ということを期待しての意見でした。

 

代替戦略の実現のために

セミナーの度に紹介している内容になりますが、東日本大震災で代替復旧を見事に行ったオイルプラントナトリという企業が実施していたBCPが非常に参考になります。

そのBCPでは、県外の同業者と災害時に協力しあう内容になっていますが、重要なのは、災害時に速やかに協力体制に移行できるよう、平常時から協力関係を築いていたことです。

事業を行うには、実務だけでなく、売上や費用をコントロールする事務的な業務も必須となります。そこをスムーズに動かすために平常時の強力関係が重要になります。

組合および組合員企業にとって、平常時の協力関係はどのようなものなのか、理想論ではありますが、下記の提案をさせていただきました。

(1)共同受注による新規契約獲得

共同受注により、大量生産を希望する顧客からの依頼を受けることが可能になります。また、遠隔地での協力体制であることから、広域災害時にも納品がストップしない供給体制で顧客からの信頼を獲得し、安定受注が見込まれます。

サプライチェーン化した産業構造の中では、近年多発している災害(特に水害)により、流通経路が無くなることが命取りになっており、遠隔地での共同受注はその悩みを解消させる大きな提案になると思われます。

 

(2)人事交流による共通技術の保持

災害発生時に他県の技術者を送り込んで製造作業の応援を行うイメージで協定を結んでも、応援先の技術を学び取るまでは本来の応援にはなりません。即時実践させるには、平常時から人事交流し、他社の装置を利用できるようになっておくことが効果的です。この人事交流は、災害時よりも平常時に有効になると思っています。

  • 交流先の優れたところ、悪いところを認識することで、自社及び交流先双方のレベルアップに繋がります。
  • 交流先の技術を吸収することで異なる顧客を獲得できます。

技術を漏らさない構造ではなく、技術を吸収する構造への変革が必要になっていると思います。

 

(3)デジタルプラットホームの共同利用

製造業において、DX(デジタルトラスフォーメーション)が次代の鍵を握っているとのことですが、デジタル化することで、情報セキュリティ上の脆弱性も表面化してきます。

 「製造を中断させないこと」=「情報基盤を止めないこと」

です。

その情報基盤を各企業で準備するには、コンピューターやネットワーク、ネットワーク機器を2重化し、確実なセキュリティ対策を準備するなど、莫大なコストが発生します。

その基盤を共同で利用することで、コストが下がり、更にその基盤として、AWSなどのクラウドサービスを利用すると、価格面でもセキュリティ面でも万全な環境が準備されます。

提案させていただいた内容はそこまで大変なハードルがあるとは思えないし、組合企業が次のステップに進むチャンスになると思います。

また、この体制により納品が途切れないことを顧客に売り込むことができ、受注を安定させることができるのではないでしょうか。

 

パンデミックにおける代替戦略の違い

上記で紹介させていただいた協力関係はパンデミック時には通用しない可能性があります。特に上記の「(2)人事交流による共通技術の保持」はパンデミック時には禁止されます。

組合間の協力体制といっても、感染防止のための資材を提供するなどの補助的なものに限るでしょう。

更に、消費活動まで変化させるパンデミックに遭遇した場合は、今の製造を維持することも無駄になる可能性があります。

今回のパンデミックのことをしっかり記録しておいてください。
自社の周りで、生産活動や消費活動がどのように変わったかを整理し、それを踏まえて、今一度自社ならびに協力企業の強み・弱みを書き出してみてください。

その「弱み」から、今度パンデミックが発生した時に(発生するまでに)やらなければならないことを整理しておいてください。

「強み」からは、別の事業や技術に進む可能性を探ってください。パンデミックで戸惑っている今が、上記を考えるのには最も適していると思います。

聞き飽きておられると思いますが「ピンチをチャンスに変える」ことにトライすることが大切です。

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