鳥取、島根でも毎日のように新型コロナウイルス感染者発生のニュースが報じられるようになり、感染拡大が始まり1年以上たって、いよいよ身近に迫っているという状況になってきました。
引続き、現在の企業経営や事業継続上の重大なリスクは新型コロナウイルスの感染拡大であることに変わりはありませんが、その陰で昨年の年末から1月にかけて、全国の電力供給のひっ迫が問題になっ
ていたことが気になっています。
これは当時、報道でも報じられていた話題ですから、記憶にある方もいらっしゃると思いますが、今回はその内容を少し振り返りたいと思います。
年末年始に電力供給がひっ迫した
昨年12月下旬から、今年1月にかけて、国内の電力は需要に対して供給が追い付かないという危機的な状況に陥りました。
国内の電力需給を監視している「電力広域的運営推進機関」が2021年1月6日に、初めてとなる非常災害対応本部を設置し、対応のための体制強化を図りました。
電力広域的運営推進機関「今冬の電力需給ひっ迫時の広域機関の対応」
通常、他の電力会社に対する電力供出の指示は、多い年でも年4、5回ほどだそうです。
それが、12月15日から1月16日の間に218回もの指示が出されたようで、この数字を見ても、当時の状況がいかに異常だったのかということがわかります。
専門家の中には、当時の状態は、東日本大震災時の計画停電の一歩手前だったと言っている方もいるようです。
電力供給がなぜひっ迫したのか
大きな災害が起きたわけでもないのに、なぜこのような危機的状況が起きていたのでしょうか?
新型コロナウイルスは何か影響していたのでしょうか?
その原因は、全国の平均気温が平年より2℃低下する厳冬だったことから、ここ5年の間で電力需要が最も高くなったにも関わらず、以下のような要因が重なり、『十分な発電ができなかった』ことにあります。
(1) 燃料(液化天然ガス LNG)の不足
これは、電力需要が大幅に増えたことから、下図のようにLNG在庫量が12月中旬以降に大幅に減少したことから、12月26日以降、火力発電の稼働制約が発生しました。
さらに、東アジアでの需要増やパナマ運河通峡遅延等により、在庫の積み増しが難しくなったという背景がありました。
図1 LPG在庫量の在庫推移
(出典:第29回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会「資料4-1 電力需給及び市場価格の動向について」2021年1月19日)
(2) 石炭火力発電の故障
LNG火力発電と並ぶ主力電源となっているのが石炭火力発電所です。
下記の表でわかるとおり、12月末から翌1月の間に各地の発電所が相次いで停止しました。
このような経緯で火力発電による電力供給量が減るという状況が発生しました。
(出典:調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 事務局「今冬の需給ひっ迫への対応について」2021年2月15日)
加えて以下のような要因により、さらに電力供給量が減りました。
(3)秋の少雨と積雪による水力発電能力の低下
(4)悪天候による太陽光発電の出力低下
以上のような要因が重なり、増えた電力需要に対して、発電量が追いつかなくなったようです。
電力供給に関する対応とリスク
資源エネルギー庁による資料によると、今回のような危機的状況の発生が無いよう、以下のような次の冬までに実行すべき短期対策と中期的な対策が検討されていました。
- 燃料状況を監視し、適切に市場に供給される仕組みをつくっていく予防策
- 燃料不足が予想される場合の電気事業関係者の体制づくり、相互の燃料融通の円滑化等の緊急時対策
- 供給力の維持・確保や電力系統のマスタープランの策定、信頼できる市場整備等の構造的対策
ただし、経済誌の記事には、2023年度までの電力供給力の増強のための具体的な対策が見られないため、猛暑や寒波による電力需給のひっ迫が起きやすい状況が続くという指摘がありました。
以上のような状況を見ると、特に夏季や冬季においては、電気の供給が不安定になる可能性があることが分かります。
私たち民間事業者が仕事を行っていくためには、情報システムとそれに伴う電気は不可欠です。
そこで、災害発生に起因しない停電が発生した場合の対応をBCPの中で検討しておくことが必要と言えます。
停電時の対応策については、今一度確認いただけると幸いです