東日本大震災から10年:BCPはどのように変わってきたのか?

本日、3月11日で東日本大震災から10年を迎えました。

今だ避難者は4万人以上であると報じられ、被害の大きさや影響の長期化を思い知らされます。

今回は東日本大震災10年という節目でもあることから、震災以降、BCPに関わる制度やガイドライン、各種事業等がどのように進んでいったのかを資料的にまとめてみました。

良く知られているガイドラインや情報以外にも、このような取り組みや動きがあったのか、という情報もあるかもしれません。

ただし、現時点で関連情報が全て網羅できているわけでもないため、今後も随時追加していきたいと思います。

平成23年3月11日に東日本大震災が発生したところから整理を始めます。

 

目次

平成23年度のBCPの動き

<主な出来事> 

8月末からの台風12号で死者85名、行方不明者15名の甚大な被害が発生しました。11月から翌3月までの間の北日本から西日本の日本海側での大雪で132名の死者が発生しました。

<BCPに関する動き>

地震、津波、原子力事故という複合災害が発生した東日本大震災をきっかけとして、災害を起点として対策を考える「原因事象」のBCPではなく、起きた事象に対応しようとする「結果事象」を前提としたBCPが必要であるとの認識が広がりました。

あわせて、従来は地震のみを対象として対策が考えられていましたが、「オールハザード型」や「想定外を無くす」という概念も広がってきました。

6月

中小企業庁「災害対応事例からみるポイント~中小企業が緊急事態を生き抜くために~」平成23年6月

平成24年度のBCPの動き

<主な出来事> 

7月には30名の死者が発生した九州北部豪雨が発生しました。

11月から3月にかけ、北日本・日本海側を中心に大雪が続き、青森県青森市酸ケ湯で積雪の深さが 566cmとなる等、記録的な積雪となりました。この大雪で除雪作業中の事故等で計101名の死者が発生しました。

 

<BCPに関する主な動き>

ISO22301に基づくBCMS認証が正式に開始し、中国地方では中国地方整備局による建設BCP認定制度が始まるなど、BCPに関する新しい動きが始まった年でした。

中小企業庁やNPO事業継続推進機構が「儲かるBCP」に関する情報発信を始めました。

 

4月

一般社団法人電子情報技術産業協会、一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会「電機・電子・情報通信産業BCP策定・ BCM導入のポイント追補版(事例集) ~有効事例、機能しなかった事例(改善策)~」平成24年4月27日
下記資料について、「東日本大震災」を受け「地震対策による被害軽減」を中心に、不足していた点を補完することを目的として事例としてとりまとたもの。


7月

一般社団法人 日本物流団体連合会「自然災害時における物流業のBCP作成ガイドライン」平成24年7月

 

8月 

ISO22301によるBCMS認証が正式開始

 

10月 

中国地方整備局による地域建設業BCP認定制度開始

 

3月

JAPIA 日本自動車部品工業会「BCPガイドライン」平成25年3月

全国中小企業団体中央会「組合向けBCP策定運用ハンドブック(第1版)~中小企業・小規模事業者の事業継続を支援する組合のBCP~」平成25年3月
 

国土交通省「下水道BCP策定マニュアル~第2版~」平成24年3月

(平成21年11月に地震編の第1版が公開)

(一社)全国銀行協会「震災対応にかかる業務継続計画(BCP)に関するガイドラインについて」平成24年3月

平成25年度のBCPの動き

<主な出来事> 

7月から8月にかけて島根県西部・山口県にかけて豪雨による被害が続けて発生しました。

この年も昨年度に引続き、太平洋側でも大雪となり、除雪中の事故等で95名が死亡しました。

 

<BCPに関する主な動き>

6月
内閣官房情報セキュリティセンター「IT-BCP策定モデル」平成25年6月
府省庁の情報システム担当者が IT-BCP の策定や見直しの実施の際に何をすべきか示唆する目的で整備されたもの。

中小企業庁「災害対応事例からみるポイント~中小企業が緊急事態を生き抜くために~」平成23年6月

 

7月

農林水産省大臣官房食料安全保障課「緊急時の食品産業事業者間連携に係る指針」平成25年7月

 

8月

内閣府「事業継続ガイドライン 第三版」(平成25年8月) 
サブタイトルが「-あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-」となり、BCPが単に防災目的のための計画ではないということを明確にしたガイドラインとなりました。あわせて、この第三版の改訂により、「事業継続戦略」という項目が追加され、代替戦略の重要性が強調されました。

8月30日から気象庁による特別警報の運用が開始

 

9月

厚生労働省「BCPの考え方に基づいた病院災害対応計画作成の手引き」平成25年9月4日

実質的な病院BCPのガイドラインとなっていますが、災害医療が中心の資料です。

9月16日に台風18号により京都府・福井県・滋賀県に初めて大雨特別警報が出される。


1月
公益社団法人大阪府産業廃棄物協会 危機管理委員会「産業廃棄物処理業に関するBCP策定ガイドライン」平成26年1月
シンプルで初動対応を重視し、実運用に耐え得るBCPを産業廃棄物処理業者が容易に策定できるようにとりまとめられたもの。


2月
一般社団法人 日本経済団体連合会「企業間のBCP/BCM連携の強化に向けて」2014年2月18日
事業継続のための企業間連携について検討した報告書。

 

3月

中小企業庁「中小企業BCPに関するQ&A集~儲かるBCPにするためのお悩み解決集~」平成26年3月

中小企業庁「BCP等の取組事例集~支援機関(自治体、商工団体、金融機関、士業等)向け中小企業BCP支援ガイドブック付録」平成30年3月

平成26年度のBCPの動き

<主な出来事> 

この年は8月豪雨により死者76名が発生した広島土砂災害が起きました。

9月には63名が亡くなった御嶽山噴火が起きました。

11月には長野県で震度6弱の地震が発生しました。

<BCPに関する主な動き>

7月
内閣府「事業継続ガイドライン -あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応- 第三版 解説書」平成26年7月  
上記のガイドラインの趣旨をさらに発展させ、事業を継続させるにはBCPで留めるのではなく、
BCM(事業継続マネジメント)としての活動が重要であることが強調されました。あわせて、BCPは平時の経営戦略と連動させるものであるという概念と同時に「儲かるBCM」という記載が追加されました。

内閣府「平成25年度企業の事業継続及び防災に関する実態調査結果」平成26年7月

大企業のBCP策定率が初めて5割を超えて、53.6%となった。中堅企業は25.3%

10月

中小企業庁「儲かるBCPにするための自己チェックシート」を公開

12月
日本規格協会「社会セキュリティ -演習の指針- JISQ22398:2014」平成26年12月22日

BCPに基づく演習実施のための各種規格がとりまとめられています。

2月
日本建設業連合会「建設業BCPガイドライン(第4版)」平成27年2月

中小企業庁「グループによるBCP策定ワークショップの手引き~「中小企業BCP策定運用指針(第2版)」の活用によるBCP策定~」平成27年2月

3月

(株)インターリスク総研「社会福祉施設・事業所における新型インフルエンザ等発生時の業務継続ガイドライン」平成27年3月(厚労省)

宮城県仙台市において、第3回国連防災世界会議が開催

平成27年度のBCPの動き

<主な出来事> 

この年は5月に口永良部島が噴火(噴火警戒レベル5)、6月に箱根山噴火(噴火警戒レベル3)、8月には桜島の火山活動が噴火警戒レベル4となり、各地で火山活動が活発となりました。

9月関東・東北豪雨により、茨城県常総市では鬼怒川が決壊し、常総市役所本庁舎が浸水しました。

 

<BCPに関する主な動き>

5月

内閣府「市町村のための業務継続計画作成ガイド」 策定」平成27年5月

 

7月

国土交通省港湾局「港湾の事業継続計画策定ガイドライン」平成27年7月

 

2月

内閣府「大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手引き」改定(平成28年2月)

 

3月

農林水産省農村振興局整備部防災課災害対策室「土地改良施設管理者のための業務継続計画(BCP)策定マニュアル」平成28年3月

平成28年度のBCPの動き

<主な出来事> 

4月には2回の震度7を記録した熊本地震が発生し、当地では10月に震度6弱を記録した鳥取中部地震が発生しました。

12月には、昭和51年の酒田大火以来40年ぶりとなる市街地大火が新潟県糸魚川市で発生。147棟が焼損した市街地火災が発生しました。

 

<BCPに関する主な動き>

災害拠点病院の指定要件にBCPが含まれたことから、この翌年から病院のBCP策定が進んできました。

 

4月 

内閣府が作成したガイドラインに基づくレジリエンス認証が始まる

 

3月

厚生労働省医政局長通知「災害拠点病院指定要件の一部改正について」平成29年3月31日

災害拠点病院の指定要件として、BCP策定等を追加したもの。この通知をきっかけに全国の災害拠点病院でBCP策定が加速しました。

内閣府「平成27年度企業の事業継続及び防災に関する実態調査結果」」平成28年3月

大企業のBCP策定率が6割を超え、中堅企業も3割が策定済と回答した。

平成29年度のBCPの動き

<主な出来事> 

11月から3月までの大雪で全国で116名が死亡しました。

 

<BCPに関する主な動き>

この年からNPO事業継続推進機構は経営者の関与が少ない、実効性が乏しい、適切な維持管理ができていないといったBCPを「残念なBCP」と称し、今後取り組むべき方向性について情報発信を始めました。

7月
内閣官房 国土強靭化推進室「すそ野の広いBCP普及のためのノウハウ集」平成29年7月
平成28年度に実施された「すそ野の広いBCP策定モデル調査」において、約120社のモデル事業者が、BCP策定に取り組む際に直面した課題やその課題に対応する上で得られた知見を、ノウハウ集として取りまとめたもの。

 

9月

国土交通省「下水道BCP策定マニュアル2017年版(地震・津波編)~実践的な下水道BCP策定と実効性を高める改善~」平成29年9月


3月
中小企業庁「支援機関(自治体、商工団体、金融機関、士業等)向け中小企業BCP支援ガイドブック BCPの必要性・効果・策定方法をわかりやすく解説」平成30年3月

中小企業の支援機関にBCPについてより理解を深めていただくためにまとめられたガイドブック。

内閣府「平成29年度企業の事業継続及び防災の取り組みに関する実態調査」平成30年3月

大企業の6割強、中堅企業の3割強がBCP策定済

平成30年度のBCPの動き

<主な出来事> 

6月の大阪北部地震に続き、100名以上の死者が発生した西日本豪雨、ブラックアウトを起こした北海道胆振東部地震や関西国際空港が機能停止した台風21号等、大規模な自然災害が立て続けに発生した年でした。 

  • 6月 大阪北部地震(最大震度6弱)
  • 7月 西日本豪雨
  • 9月 北海道胆振東部地震、台風21号

 

<BCPに関する主な動き>

6月

内閣府「平成29年度企業の事業継続及び防災の取り組みに関する実態調査」平成30年6月

 

その他、事業継続強化計画を推進するための指導人材育成や普及のための研修会が各地で開催されました。

令和元年度のBCPの動き

<主な出来事> 

昨年に続き大規模な風水害が発生し、1月に新型コロナウイルス発生が確認されました。

関東地方に9月、10月と連続して台風が通過し、10月の東日本台風では死者94名と甚大な被害が発生しました。9月の台風15号で千葉県では停電が長期化しました。

 9月 台風15号 大規模停電
 10月 台風19号広域水害
 1月 新型コロナウイルス確認

 

<BCPに関する動き>

7月

「事業継続力強化計画認定制度」を含めた中小企業強靭化法が施行

厚生労働省「病院の業務継続計画(BCP)策定状況調査結果」令和元年7月31日

災害拠点病院では7割がBCP策定済と回答

 

1月

日本ビルヂング協会連合会「感染症に対応した事業継続計画(BCP)作成ガイドライン」2020年1月

 

2月

(一社)日本建設業連合会災害対策委員会「新型コロナウイルス感染症対応 建設BCPガイドライン(第1版)~感染症対応の実際を踏まえて~令和2年11月

会員が感染症対策のBCPを策定したり、改訂するためのガイドライン

 

3月

国土交通省航空局「A2-BCP」ガイドライン~自然災害に強い空港を目指して~」令和2年3月

平成30年9月に台風21号で関西国際空港が被害を受けたり、北海道胆振東部地震で新千歳空港が電力停止を受けたことなどを受けて、各空港で「A2(Advanced/Airport)-BCP」を策定することとなり、そのガイドラインとしてとりまとめられたもの

令和2年度のBCPの動き

<出来事> 

新型コロナウイルス感染拡大し、全世界的な影響が発生しました。
 4月 国内で緊急事態宣言
 1月 2度目の緊急事態宣言

<BCPに関する動き>

新型コロナウイルス感染症に対応するためのBCPモデル等が複数発行されました。

6月

厚生労働省社会・援護局福祉基盤課「社会福祉施設等における事業継続計画(BCP)の策定について(依頼)」令和2年6月15日

11月

国土交通省「「道の駅」におけるBCPガイドライン(案)について」2020年11月

地域防災計画に位置付けられた「道の駅」に対してBCPを作成するためのもの

12月

厚生労働省社会・援護局障害保健健康福祉部「障害福祉サービス事業所等における新型コロナコロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」令和2年12月

厚生労働省社会・援護局障害保健健康福祉部「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」令和2年12月

1月

農林水産省「自然災害等のリスクに備えるためのチェックリストと農業版BCP(事業継続計画書)」令和3年1月

公益社団法人日本農業法人協会・NPO日本プロ農業総合支援機構「農業版BCP(事業継続計画)ガイドライン」令和3年1月

2月

厚生労働省「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修」令和3年2月26日公開

BCP策定に必要なノウハウを伝えるための研修動画を公開した

弊社が10年以上継続的に支援をしている鳥取県のBCP策定支援事業の取り組みについてはこちら

東日本大震災から10年目:鳥取県のBCP普及事業はどのように変化したか

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