初動対応とBCPの事業継続対応の違いを簡易演習から理解する

持ち出し

前回の記事で、簡単な状況付与を行う簡易型BCP演習を防災の研修会で参加者にいきなり体験していただくこと紹介しました。

その研修会が、2週間前に行われました。

その時の気づきについてお知らせします。

目次

初動対応とBCPの事業継続対応は異なる

災害への備えというテーマで集まっていただいた参加者の皆さんに、突然小さな紙を3枚づつお配りし、それぞれの紙に一つずつ「起きて欲しくないこと」を3つ書いていただきました。


それらの「起きて欲しくないこと」が書かれた紙を裏返した状態で集めておき、その中から複数をピックアップし、記載されている側にひっくり返していただきます。

続けて、業務時間中にそれらの事態が起きた!という前提で、今から何をするのかを考えていただきます。

しかし、参加いただいた皆さんが最初に口々に言ったのは、「これはお手上げだ!!」という言葉でした。


『起きて欲しくないこと』を書いてくださいとお願いしているので、かなり厳しい事態を皆さん書き出していたためです。

例えば、
 「建物が倒壊した」
 「大きな津波が来た」
等が小さな紙には書かれていました。

それが複数同時に起きたということを前提とするため、手がつけられないとなるのも当然です。


しかし、しばらくすると

「社員に連絡をとろう」
「被害がどうなっているか調査を始めよう」
「体制を整備しよう」

などの意見が出始めます。


「早くやることを順番に5つほど選んでください」
とお伝えすると、

何からやればいいのかということを、皆さん整理し始められていました。

最初はお手上げだと思った状態でも、しばらくすると、ほとんどの方は何をすればいいのか徐々に思いついてくるようでした。


大きな災害を経験した方は限られますが、あちこちの災害の話を見聞きする機会が増えています。

そのため、大きな非常事態が起きた時の初動対応については、少し時間をとりさえすれば、比較的考えやすいようでした。


ただし、すぐに何をすべきか思いつかないという課題がありますが、こういう練習を行うことでそれらは解決できそうです。

 

初動対応とBCPによる事業継続対応の質の違い

しかし、事業継続に必要な対応を考える場面になると、途端に状況が変わりました。


多くの方が、
「どのような状況になっているのか、細かい情報が無いと何をすればいいのかわからない」
と口々に言い始めました。


得られた情報から、必要な打ち手を考えるにためには詳しい被害の情報や周辺の状況がよく分からないので、考えようが無いということでした。


非常事態が起きてからの初動対応は比較的イメージしやすいわけですが、事業をそこからどのように再開させるのかということを考えることはなかなか難しそうでした。

 

初動対応は災害が起きて、状況がよくわからないけどやるべきことはある程度決まっているため、後はそれをどんどんやるだけです。

しかし、止まった事業を再開させるには、今どんな状況なのかというのがよくわからければ取るべき必要な対応策がわかりにくいというのは当然です。


しかし、こういう時は往々にして、十分な情報がそろいません。

 

とは言っても、情報が得られないからと言って、判断しないでいるとどんどん対応が遅れてしまいます。


前職の時に、自衛隊の元幕僚長だった社員から学んだ危機管理の鉄則の一つにこのようなことがあります。

それは、非常事態に対応するには、得られた情報から今後の展開を予測し、どのように対応するのかを決めて急いで実行する、もし対応が適切でなければすぐに変更するということです。


参加者から出てきた今の情報では判断できないというのが、まさにここの部分の対応だったと思います。

今得られている情報以上にもし判断材料が無い場合なら、そこから何が起きているのかを推定し、対応策を考えることが必要です。

 

ただし、その場合は、取るべき対応策については複数のオプションを考えておくことが必要です。


前回行った「くじびき型演習」では、ここの体験がうまくできなかったように感じました。


次に行う時には、このような状況判断や対応策を見出す練習を行うことで、事業継続対応力を向上させるためにかなり効果が得られるのではないかと考えています。


この「くじびき型演習」はかなり有効と感じていますので、事業継続対応の演習にも、もっと効果的に使えるように、続けて研究をしてみます。

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