働き方改革と災害対策をハイブリッドで

働き方

2019年度から「働き方改革関連法」の取り組みが始まったことから、ただでさえ忙しい総務部門の方に悩みのタネがさらに増えました。

中小企業の総務部門の方にとっては、来年度からの対応の準備が必須になってきました。

 

そのような中、各地で大規模な災害が続けて発生しており、BCPや災害対策をまだ始めていない企業にとっては、災害への備えを始めることは「目の上のたんこぶ」状態でしょう。

BCPに取り組んでいる企業でも、「ちゃんと対応できるようにしておくように」という経営者からのプレッシャーを感じているところでしょう。

 

さて、この「働き方改革」と「災害対策」に何の関係があるのだと思われるかもしれませんが、これらを両輪で進める方法を思いつきました。

この記事ではその内容をお知らせします。

目次

働き方改革は労働時間の短縮が課題

厚労省が提示している資料を見ると、働き方改革の第1のポイントは「労働時間法制の見直し」とあります。

 

そこには『働き過ぎを防ぐことで、働く方々の健康を守り、多様な「ワークライフバランス」を実現できるようにします。』とあります。

 

そのために、

・残業時間の上限を規制し、長時間労働をなくすこと

・1人1年あたり5日間の年次有給休暇の取得を企業に義務づけ、年次有給休暇を取得しやすくすること

・月60時間を超える残業は割増賃金率を引き上げる

等といった取り組みを企業は行わなければなりません。

 

報道等ではよく、働き方改革は「残業時間をどうやって減らすのか」にポイントを絞って議論をされています。

しかし、単純に残業時間を減らすだけでは、仕事を行う仕組みから変えていかないと、売上げの落ち込みや経費の増加につながります。

最終的には働く方々に無理を強いる可能性もあります。

 

そのために、厚労省の資料では「生産性を向上しつつ長時間労働をなくすためには・・」という前書きに続き、

「職場の管理職の意識改革・非効率な業務プロセスの見直し・・を通じて長時間労働をなくしていくことが必要です。」と記載されています。

 

法律改正による規制と誘導よって、企業は労働者の労働時間をこれまでより短縮させる必要が出てきましたが、それを実現するためには仕事の見直しがかなり重要な要素になることがわかります。

 

災害時の事業継続対策には人が重要

次に企業の災害対策の重要な取り組みである「BCP」に目を向けてみましょう。

 

一般的には「BCP」というと、安否確認とか備蓄品、情報システムの2重化などと言った災害対策をすぐイメージしてしまいます。

しかし、BCPはハード面での災害対策に加えて、「災害時にどのように働くのか」という要素もあります。

そこで、「働き方」という視点で改めてBCPを見ると、BCPは「災害時の働き方マニュアル」という表現もできそうです

 

働き方改革という視点でBCPを見た時に注目したいのが、BCPの策定過程で行う自社の立ち位置の再認識と企業の業務分析です。

 

この分析を行う理由は下記を認識するためです。

 

  • 企業にとって何が最も重要なのかを全社員で共通認識し、災害時にも全員がぶれることなく目標に向かって動けるようになること
  • 企業がお客様に提供している製品やサービスをどのように作り出しているのかを把握し、それを行うために絶対的に継続維持すべき資源(人、物)を洗い出すこと。
     

これらの分析を進めていくと、全ての企業にとって、社員とその家族が最も重要な資源であると結論付けられていきます。

 

BCPの目的、つまり非常時における事業継続を実現するためには、大規模災害時においても、企業を支える社員やその家族の生活が継続されること、すなわち働く方々を重視する対応が不可欠となります。

 

災害対策は働き方改革につながる

BCPでは仮に社員の多くが出勤不可能になった場合でも事業を継続していく方法を考えます。

 

出勤できる社員が非常に少ないという状況が発生した場合は、最も重要な事業に社員を集中させる必要があります。

つまり、仕事の仕方をいつもとは大きく変えることが必要です。

 


その中で中小企業でよく問題になるのが「XXさんがいないと仕事が再開できない。」ということです。

 

大企業では1つの仕事を複数の社員で実施できる余裕がありますが、中小企業ではなかなか難しいというのが実情でしょう。

しかし、中小企業だからと言って特定の担当者に頼りきる仕事の仕方で良いわけではありません。

 

中小企業の場合、団塊世代の退職により技術継承ができないという、企業経営にとって大きな問題も発生しています。

 

災害時にはこのような状態が突然発生することになります。

ほとんどの場合がお手上げになるでしょう。

 

「その時になったら考える」という台詞をよく聞きますが、考えたらわかりますけど、何とかなりません。。


必要な対策は特定の専任者がやっている作業を他の社員や他社ができるようにすることです。

そのためには仕事の仕組みを定型化したり、マニュアルを整備することが必要になるでしょう。

仕事の進め方自体も変えることが必要になる場合があるかもしれません。

 

特定の人しか出来なかった作業が他の社員や他社が出来るようになれば、その方はより付加価値の高い仕事に携わることができるようになります。

仕事を定型化することでスピードアップも可能になりますから、時間短縮が実現できます。

 

これまでAという仕事しかしなかった社員が、BとかCとかのより付加価値の高い仕事に携わることができれば、会社全体の生産性も向上する可能性があります。

 

BCPに取り組むことが、より効率的な仕事の仕組みを考えたり、特定の人に依存している仕事の仕組みを変えるきっかけになるため、BCPと働き方改革を一度に進めることができると考えています。

 

 

働き方改革を災害対策とハイブリッドで

上述させていただいたように、働き方改革もBCPも根本から考えると、同じ対策がいろいろな面によい効果をもたらしてくれます。

私たちがBCPのセミナーでよく言うハイブリッド型BCPの根底もここにあります。

 

ハイブリッド型BCP(これは弊社の者がつけた名前です)は、BCPの策定において災害に強くなるための事前対策を、最初から平時の経営にも役立つように工夫するもの。

それによって「BCPの実施=コスト」という従来の図式からの脱却を狙っています。


仮に取引先企業からBCPを策定するよう要望されて、計画策定に取り組み始めたとしても、BCPを策定することにより、安定して物やサービスを提供できる企業としてPRできますし、長期的にはプラスに繋がる取組みにすることも十分できます。

 

BCPに取り組む際には、最初からこのようなプラスの効果が発揮できるように考えていくことが非常に重要と考えています。


ある企業では以下のようなことがありました。


「BCPの対策として、災害発生時における関係者への状況通知手段としてインターネットを活用する必要性があることが分かったが、小さい企業なのでホームページが無い。そこで、先ずは費用をかけてホームページを作ることから進めなければならない。」となりました。

これはマイナスイメージからスタートでした。

 

しかし、ホームページの本来の目的を考えると、災害時よりも平時の利用価値のほうが高いことに気づき、前向きの投資として実施して行くことになりました。


このような話は皆さんにとっては当たり前のことかもしれません。

しかし、その企業にとっては、最初はコストとしか考えられなかったBCPによる対策が、いきなり投資に変わったわけです。

 

災害が発生しないに越したことはないですが、昨年、今年の異常気象を振り返ると、いつ災害にあっても仕方の無い状況になっていそうな気がします。

南海トラフ地震については政府がかなり対策を打ってきています。

 

BCPの策定と、そこから必要になる対策をプラスになるように考え、社員と家族を守れる企業に成長しませんか。

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